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日外会誌. 91(10): 1548-1553, 1990


原著

Interleukin 2 (IL-2) と Tumor necrosis factor (TNF) 併用脾内投与による脾由来 Lymphokine activated killer (LAK) 誘導能とその持続効果

近畿大学 医学部第1外科

中嶋 一三 , 奥野 清隆 , 大西 博昭 , 白山 泰明 , 中村 哲彦 , 広畑 健 , 安富 正幸

(1989年10月16日受付)

I.内容要旨
これまでにわれわれは担癌マウスにおいてInterleukin 2(IL-2)を直接脾内に注入し,LAK細胞を生体内で効率よく誘導する方法を検討してきた.そこで今回さらに強いLAK細胞を有効に引き出す目的でIL-2とrTNF併用投与を試みたところLAK活性が増強するのみならずその作用が長期間にわたって持続するという効果が認められさらにマウスの生存率が延長するというin vivo効果を認めた.C3H/HeNマウスに同系由来X5563腫瘍細胞(2×106コ)を皮内移植し,12日後にこの腫瘍結節を外科的に切除する.同時に手術日より連日3日間,脾臓内に直接IL-2,rTNF及び,IL-2+rTNF(併用)注入し,経時的にマウス脾細胞のLAK誘導能を検索した.IL-2単独投与に比較してrTNFとIL-2を併用した群では,治療後1週目のLAK及びLAK前駆細胞誘導能に差を認めなかったが,2週目以後では併用群のほうが明らかに増強していた.3週後の脾細胞でもIL-2+rTNF併用群においてそのLAK誘導能は明らかに高かった.次にマウスの予後を検討したところ,やはりIL-2+rTNF併用群では生存日数に有意の延長を認め,そのin vivo効果を反映した.つまりIL-2とrTNFの併用投与により,担癌マウス脾細胞のLAK誘導能を長期間持続させ,予後の改善をもたらしたと考えられる.
IL-2単独の治療ではその副作用等の問題のため投与量には限界がある.今回の結果はより少量のIL-2投与で生体内でより有効にLAK細胞を誘導することが可能であり,これまでにわれわれの行なってきたIL-2脾動注療法のregimenの改善に役立ち,臨床効果の向上が期待されるものと考えられる.

キーワード
インターロイキン2, TNF, 脾内投与, LAK 細胞

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