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日外会誌. 91(6): 705-712, 1990
原著
膵頭十二指腸切除術後の腹腔内出血に対する動脈塞栓術 第1報
I.内容要旨膵頭部・下部胆管・十二指腸領域の悪性腫瘍(いわゆるpancreaticoduodenobiliary carcinoma)に対し,近年では広範なリンパ節郭清を含む膵頭十二指腸切除術(PD)が施行されている.これに伴い術後の合併症として,縫合不全,膵液瘻が時に認められ,さらに多量の腹腔内出血も来す場合がある.この多量な腹腔内出血は治療が困難で,従来は致命的な転帰をとる場合が多かった.最近では,経カテーテル治療が発達し,PD後の腹腔内出血に対しても経カテーテル動脈塞栓術(TAE)が積極的に施行され,救命率が向上してきた.今回著者らは,PD後多量の腹腔内出血10例(計14回)に対しTAEを施行し,以下の結果を得た.
1)膵頭部癌4例,Vater乳頭部癌3例,胆管癌2例,十二指腸肉腫1例の計10例である.男性8名,女性2名,45~75歳(平均63.7).TAEまでの期間は術後平均20.8日であった.
2)縫合不全による感染症を全例で合併していた.
3)PDから縫合不全症状出現までの期間,PDから腹腔内出血症状出現までの期間が各々長い例が経過良好で,腹腔内出血出現からTAEまでの時間が短い症例で経過良好であった.
4)出血部位は全例で確認でき,出血形態はpseudoaneurysm 5件,extravasation 9件であった.pseudoaneurysmを呈した症例は,extravasationを呈したものより明もらかに予後良好であった.
5)全例で出血のコントロールが可能で,循環動態の改善が計られた.
6)TAEによると考えられる合併症は認めなかった.
以上より,PD後の多量の腹腔内出血に対して,TAEは安全で非常に効果的な治療法であると考えられる.
キーワード
膵頭十二指腸切除術, 術後出血, 経カテーテル動脈塞栓術, Interventional angiography
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