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日外会誌. 91(6): 683-694, 1990
原著
門脈枝結紮術の許容限界と二期的肝切除による肝切除限界の拡大の研究
I.内容要旨雑種成犬を用い従来承認されてきた肝切除限界を拡大する目的で,予め切除予定領域の門脈枝を結紮(PBL)した後4週目に二期的に肝切除を行って検索し,以下の結果を得た.1.門脈枝結紮術の許容限界:PBL後の4週生存率は,正常肝では84%PBLで63.2%,94%PBLで30.0%,Dimethylnitrosamine(DMNA)硬変肝では70%PBLで60.0%,84%PBLでは0%であり,門脈枝結紮の許容限界は正常肝84%領域,DMNA硬変肝70%領域と考えられた.これらの領域のPBL後4週生存例では結紮側肝葉は萎縮し,非結紮側肝葉は再生肥大して,PBL後4週目の一般肝機能検査値はほぼPBL前値に回復し良好に維持された.ICG Rmax値もPBL前値に回復し,非結紮側肝葉の組織血流量は有意に増加し,硬変肝の肝線維化率も改善した.硬変肝70%PBL後4週未満死亡例のPBL前の肝機能は4週生存例に比し不良で,中等度以上の腹水や黄疸,或は肝線維化率12.5%以上,Madden分類C-3のものは全例死亡した.2.門脈枝結紮後二期的肝切除:1)生存率;一期的肝切除後の4週生存率は正常肝84%切除で22.2%,硬変肝70%切除では0%と低率であったが,門脈枝結紮後の二期的肝切除では夫々 66.7%,50.0%と明らかに向上し,門脈枝結紮による死亡例を加えても夫々42.1%,30.0%と一期的肝切除の成績を凌駕した.2)肝機能の変化:二期的肝切除後の残存肝機能障害は一期的肝切除に比べ軽微で肝組織血流量も良好に維持された.また肝切除前のICG Rmaxは二期的肝切除の予後の判定に有用であった.3)肝の形態的変化:一期的肝切除に比し二期的肝切除では術後4週目の残存肝組織の変化は明らかに軽微であり,DMNA硬変肝の二期的肝切除後では肝線維化率も有意に改善した.
以上,肝広範切除に際して,予め切除領域の門脈枝を結紮しておくと非結紮側肝葉の予備力や血流量が良好に維持され,二期的肝切除後の残存肝機能障害も軽減して,肝切除限界の拡大が可能となった.
キーワード
拡大肝切除, 代償性肝肥大, Dimethylnitrosamine 硬変肝, 肝機能予備力, 肝組織血流量
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