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日外会誌. 91(6): 677-682, 1990
原著
大腸癌の転移と細胞回転
I.内容要旨同時性4例,異時性2例,計6例の大腸癌肝転移例を対象に,flow cytometryを用いた新しい細胞動態解析法migration chase methodにて,正常粘膜,原発巣,リンパ節転移巣,肝転移巣の細胞回転の差異を検討した.
正常粘膜のbromodeoxyuridine labeling indices(LI),DNA synthesis time(Ts),generationtime(Tg)は,おのおの4.9±2.2%,11.6±1.4hours,11.3±3.7daysであった.一方,癌部では,おのおの13.9±7.1%,16.9±4.8hours,6.0±2.5daysで,癌ではTsは延長しているものの,LIが高く,Tgが短いという結果であった.
原発巣と転移巣の比較では,リンパ節転移巣のLIは12.0±4.5%で,原発巣の11.6±4.2%と差はないが,Tsは14.4±6.0hoursで原発巣の17.0±6.2hoursに比し速く,Tgも5.0±0.5daysと原発巣の6.2±1.9daysより短かった.肝転移巣では,LIが30.1±18.1%と著明に高値を示す一方,Tsは28.0±10.2hoursと延長していた.Tgは,4.8±2.1daysと肝転移巣においても原発巣に比し短かった.
Tgの逆数を増殖率とし,LI,Ts,DNA index(DI),LI/DIとの相関を重回帰分析にて検討したところ,LI/DIが最も強い因子であり,両者は,回帰式Y=1.8×10
-2×-1.6×10
-3,r=0.7868,p<0.00001できわめて有意に相関した.
今回の検討より,転移巣では,原発巣に比し細胞回転が早いことがin vivoの事実として明らかとなった.また,腫瘍増殖率をin vitro BrdUrd labelingにより,LIとDNA indexより推測できる可能性が示唆された.
Flow cytometryを用いたこの細胞動態の解析法は,副作用も少なく,簡便でしかも多数の検体を短時間で解析できるという利点を有しており,今後幅広い臨床あるいは実験での応用が期待される.
キーワード
Cell Kinetics, Metastasis, Flow Cytometry, Bromodeoxyuridine, Colorectal Cancer
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