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日外会誌. 91(2): 184-190, 1990


原著

エンドトキシンの胆汁鬱滞作用とその臨床的意義に関する研究

防衛医科大学校 第1外科

西田 正之 , 玉熊 正悦 , 出井 雄幸 , 望月 英隆

(1988年6月15日受付)

I.内容要旨
消化器外科領域では重篤な感染症に合併して,胆道系に閉塞機転を認めないにもかかわらず胆汁鬱滞型の黄疸を呈する症例にしばしば遭遇する.著者らは教室において最近経験されたこの種の症例18例を臨床的に分析・検討したところ,これらの症例では血中にエンドトキシンが高率に認められることと,エンドトキシンの肝障害作用に関する従来の知見とから,この黄疸発生にエンドトキシンが関与している可能性を推測し実験的に検討した.すなわちラットに持続的エンドトキシン血症モデルを作製してエンドトキシンの胆汁排泄におよぼす影響を検討した結果,エンドトキシンの少量持続投与による持続的エンドトキシン血症では血中ビリルビン値の直接型優位の上昇と胆汁流量の低下が観察された.しかもこの際胆汁排泄量と総胆汁酸排泄量との相関から,胆汁流量の減少にはエンドトキシンによる胆汁酸非依存分画の抑制が示唆された.なお本モデルでは肝組織血流量と動脈圧に明らかな変化はみられず,エンドトキシンによる循環動態の変化が黄疸発生に関与した可能性は少ないものと考えられた.
以上の結果は外科領域の重症感染症に併発する胆汁鬱滞型黄疸,ひいてはMOFの病態の理解に役立つ知見と考える.

キーワード
endotoxin, 胆汁酸非依存分画, 肝内胆汁鬱滞

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