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日外会誌. 89(12): 1997-2009, 1988


原著

膵全摘犬への脂肪乳剤投与の影響について

近畿大学 医学部第2外科(指導:久山健教授)

椿本 龍次

(昭和62年12月17日受付)

I.内容要旨
雑種成犬16匹に膵全摘を施行し,術後4週間,脂肪乳剤を含む経静脈栄養を施行し血中脂質検査,脂肪負荷試験,PHLA検査を行ない,肝生検で脂肪肝の有無を調べた.脂肪乳剤の影響を調べるため,A群(脂肪乳剤1g/kg/day投与,n=6),B群(脂肪乳剤2g/kg/day投与,n=5),C群(脂肪乳剤投与せず,n=5)の3群に分け、それぞれインスリン,グルカゴン投与下に管理した.B群では血中コレステロール,リン脂質の上昇を起こしたが,A群では血中TGの軽度な上昇のみであつた.C群は血中コレステロール,リン脂質の低下を起こし,低血糖を起こし易かつた.血中脂肪消失率K2はB群では術後2週以降低下したが,他の群では有意な変化はなかつた.リボ蛋白リパーゼはB,C群のみ調べたが,有意な低下はなかつた.脂肪乳剤は投与後FFAとなり,一部がケトン体に変えられて利用されていると思われた.また.インスリンで持続的にコントロールされていれば,脂肪乳剤を投与しても脂肪肝は起こらなかつた.膵全摘後,インスリンによる血糖コントロールに注意すれば脂肪乳剤1g/kg/dayの投与は可能であり,有用であると思われた.

キーワード
膵全摘, 脂肪乳剤, 経静脈栄養, 脂肪負荷試験, リポ蛋白リパーゼ

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