[書誌情報] [全文PDF] (2363KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 89(11): 1914-1919, 1988


原著

小児悪性固形腫瘍におけるdelayed primary operation

千葉大学医学部附属病院 小児外科

大沼 直躬 , 高橋 英世 , 真家 雅彦 , 江東 孝夫 , 田辺 政裕 , 栗山 裕

(昭和62年9月2日受付)

I.内容要旨
過去10年間に治療した小児悪性固形腫瘍105例中, delayed primary operationを行った症例は19例で,神経芽腫11例,肝芽腫5例,仙尾部卵黄嚢癌3例である.これら症例の経験からdelayed primary operationにおける術前化学療法の原発腫瘍ならびに転移巣に対する効果,術前化学療法の期間と手術時期,手術にあたっての手術法の工夫などについて検討を加えた.
昭和52年から昭和61年までの進行神経芽腫21例をdelayed primary operation群11例とnon delayed primary operation群10例にわけ原発巣ならびにリンパ節転移の切除率を比較した. Delayed primary operation群は全例全摘が可能であったが, non delayed primary operation群では10例中4例しか全摘できていない.術前化学療法の摘出標本の組織型におよぼす影響に関しては,数少ない症例ではあるが,生検した頚部リンパ節が円形細胞型の神経芽腫であったが, delayed primary operation時には花冠細線維型の神経芽腫となっていたり, A1プロトコール施行後の摘出標本がいずれも成熟型に近い混成型や低分化型の神経節芽腫となっていた.
肝芽腫の5例および仙尾部卵黄嚢癌の3例ともdelayed primary operationにより全摘が可能であった.
Delayed primary operationは術前化学療法を2~3コースにとどめて手術を行うのが手術時期を逸しないようであった.すなわち, 2~3コースの化学療法で全身状態の改善がみられ,遠隔転移の消失や縮小が得られている.
Delayed primary operationの手技上の工夫としてCUSAを使用したが,進行神経芽腫のリンパ節郭清をより完璧に行ったり,両腎温存をする上で,また肝芽腫の非定型的肝切除を行ったりする際に有用であった.

キーワード
malignant solid tumor in childhood, delayed primary operation, CUSA (Cavitron Ultrasonic Surgical Aspirator)

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。