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日外会誌. 89(11): 1908-1913, 1988


原著

末梢動脈疾患における術後多臓器不全の検討

岡山大学 医学部第2外科

栗原 英樹 , 岡田 隆彦 , 三井 秀也 , 草井 孝志 , 諸国 眞太郎 , 内田 發三 , 寺本 滋

(昭和62年11月11日受付)

I.内容要旨
当科における最近11年間の末梢動脈疾患手術251例, 281手術を対象とし,術後多臓器不全(以下MOF)の発生に関する諸因子につき検討し,あわせてほぼ同時期における他疾患手術後MOFと比較した.
MOFは251例中10例,4.0%に発生したが, 4臓器以上の障害例は全例を失うなど50%の死亡率であった.手術時間・出血量・輸血量とMOFの発生率・死亡率との間に相関は見られなかったが,待期手術後のMOF発生率3.0%に対し緊急手術後では20%と有意に高率であった.他疾患手術後との比較では,大動脈瘤手術後よりは低率であったが,消化器手術後の1.4倍の発生率であった.
初発症候は消化管出血が多くみられたが,心障害・肺障害は少なかつた.比較的侵襲が少なく清潔操作である末梢動脈疾患においてもMOFは発生したが,本症の発生・進展の阻止には緊急手術を可及的に回避し, 術前全身状態,特に糖尿病の把握が肝要と考えられた.

キーワード
術後多臓器不全, 末梢動脈疾患, 待期手術, 緊急手術, 消化管出血

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