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日外会誌. 89(11): 1879-1885, 1988
原著
自家移植による乳頭乳輪温存乳癌根治手術
-適応とIII期的乳房再建-
I.内容要旨近年は早期乳癌に対し大胸筋を温存する非定型的乳房切断術が普及し定着しつつある. これらの術式では定型的乳房切断術後にみられるような前胸部の変形はかなり改善されるとはいえ,乳房をうしなうことと相まつて術後に与える精神的影響は女性にとつて測り知れないものがある. これらの負荷を軽減する方法のひとつとして,当科では自家移植による乳頭乳輪温存術式を採用している. これは初回根治術(PateyまたはAuchincloss法)に際し左下腹部にnipple-areolar complexを移植しておき, II期的に約1年後広背筋皮弁による乳房形成, III期的にさらに6カ月後nipple-areolar complex再移植を行い乳房再建を完了するものである.過去の乳切症例の検討から適応条件は原則として(1)T
2a N
1aM
0以下でT ≦3.0cm , (2)乳頭よりの異常分泌がなく乳頭陥凹もない,(3)触診で腫瘍が乳輪外縁から3.0cm以上離れている,(4)mammographyで腫瘍から乳輪乳頭下につづく異常陰影がない,(5)年齢が45歳以下で患者が希望する,(6)永久標本にて切除乳輪下組織に癌細胞をみとめない,としている. 現在まで乳頭乳輪温存症例は18例で最長follow-up期間は初回根治手術より6年6カ月であるが乳頭乳温存に起因する局所再発はなく, cosmeticにも満足のいく成績が得られている.今後,乳切後の乳房形成はますます増加していくことが予想されるが, この自家移植による乳頭乳輪温存術式は症例を選択すれば乳房再建のうえで安全で有用な方法と考えられた.
キーワード
乳頭乳輪温存, 自家移植, 乳房再建, 大胸筋温存乳癌根治手術
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