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日外会誌. 89(11): 1780-1788, 1988


原著

早期胃癌の臨床病理学的検討
-早期胃癌に対する縮小手術の妥当性および内視鏡的治療の適応と限界を知るために-

新潟大学 医学部第1外科
*) 新潟大学 医療技術短期大学部外科
**) 現 県立がんセンター新潟病院 外科

梨本 篤**) , 田中 申介 , 宮下 薫 , 佐々木 公一 , 武藤 輝一 , 曽我 淳*)

(昭和62年10月21日受付)

I.内容要旨
過去25年間に経験した339例の単発性早期胃癌を対象に壁深達度,肉眼型,長径,所属リンパ節転移,遠隔成績を中心に臨床病理学的に検討し,縮小手術の妥当性,内視鏡的治療の適応と限界について以下の結論を得た.
1)縮小手術について
〈A〉および〈M〉の占拠部位をもつ早期胃癌はR1手術十重点的N2(No. 7,8a,No. 9の一部,およびNo.11の近位側)郭清が可能であり,大小網切除はリソパ節郭清に支障をきたさない範囲で縮小切除が可能である. しかし,術中診断も加味しN2(+) と判定したならばR2以上の郭清を施行すべきである.
2)内視鏡的治療について
リンパ節転移がないと考えられる早期胃癌は
① 長径2cm以下の隆起型(I,Ila型)m癌
② 長径1cm以下のIlc型U1(-),分化型m癌
③ 長径2cm以下のIlb型m癌
であり,内視鏡的治療の適応となる早期胃癌と思われる.しかし,臨床的診断能力に未だ限界があり,やむを得ない理由がないとき以外は外科的治療を選択すべきである.
占拠部位〈A〉,〈M〉の早期胃癌に対する縮小手術,および上述のごとく, ごく限られたタイプの早期胃癌に対する内視鏡的治療の可能性が示唆された. しかし,確立された標準治療方針となるには多施設の参加によるprospective randomized studyの実施および臨床診断能力の尚一層の発展が必要と思われる.

キーワード
単発性早期胃癌, 縮小手術, 内視鏡的治療, Rl手術+重点的N2郭清

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