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日外会誌. 89(10): 1632-1640, 1988


原著

大腸腺腫並びに大腸癌の免疫組織化学的研究
―CEA局在性・レクチン結合性および核 DNA 量と異型度に関する検討ー

1) 神戸大学 医学部第1外科
2) 神戸大学 医療枝術短期大学部

今西 築1) , 多淵 芳樹2) , 斉藤 洋一1)

(昭和62年10月30日受付)

I.内容要旨
大腸腺腫54例と癌腫29例を対象とし,免疫組織染色によるCEA局在, PNA• UEA-1 • DBAのレクチン結合性およびFeulgen核DNA量の測定を行い,大腸における腺腫と癌腫の関係につき検討し,次の通りの成績と結論を得た.
(1)CEAは軽度異型腺腫40%,中等度異型腺腫68%,癌腫100%にその局在がみられ,特に胞体内にびまん性に局在するCD型はそれぞれ9% • 26% • 79%に認められ, 3者間に細胞内CEA局在性に差がみられた.(2)PNAとDBAは正常粘膜・腺腫・癌腫の結合部位に差が認められたが,腺腫の異型度による差は観察されなかった.(3)UEA-1 の刷子縁への結合は軽度異型腺腫29%• 中等度異型腺腫63%• 早期癌79%• 進行癌80% ,胞体内びまん性の結合はそれぞれ11% • 16% • 63% • 100%にみられ,形態学的異型度の違いによつてUEA-1の結合部位に差が認められた.(4)Feulgen核DNA量の最頻値•平均核DNA 量・over 4cの出現率は正常粘膜・腺腫・癌腫の順序で高値を示し,腺腫の異型度の違いによる差は観察されなかったが,中等度異型腺腫の中にover 4C出現率からみて癌腫と同様の核DNA量の変化を示す例が50%に認められた.
以上の成績は腺腫と癌腫との間に一連の段階的な変化が存在していることが示唆していると思われる.また,腺腫におけるCEAの細胞内局在や細胞糖鎖および核DNA量の変化は形態学的に認識し得る癌化に先行して生じている可能性があることを示唆すると同時に,腺腫がmalignant potentialを有していることを示唆していると考えられる.

キーワード
大腸腺腫, 大腸癌, レクチン, Carcinoembryonic antigen (CEA), 核DNA量

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