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日外会誌. 89(7): 1093-1098, 1988


原著

新しい心房中隔欠損孔作成術
一手術手技,臨床成績および手術効果一

国立循環器病センター 心臓外科
*) 和歌山県立医科大学 胸部外科

磯部 文隆 , 八木原 俊克 , 岸本 英文 , 山本 文雄 , 藤田 毅 , 内藤 泰顕*)

(昭和62年7月20日受付)

I.内容要旨
外科的心房中隔欠損孔(ASD)作成術として従来実施されてきたBlalock-Hanlon手術の手術成績は未だ満足しえるものではない.その間題点を補うため,新しいASD作成術を考案した.
僧帽弁交連切開術用のHarkenナイフを修正したナイフを製作し,卵円孔開存(PFO)の認められる症例では,右房壁からこのナイフを挿入しPFOを介して左房腔へ導きナイフの側面にある刃で卵円窩の膜性中隔を裂開する方法である(Method I).PFOの狭小なまたは認められない症例には,Schuster法の併用により筋性中隔を含めて十分なASDの作成が可能である(Method II).
1981年6月から現在までに,Method Iを11例に施行した.手術死亡を2例経験したが,本法に起因するものではなかった.Method IIは1986年2月から施行し,3例を経験したが手術死亡はない.
ASD作成により心房間圧較差は,術前平均13.8±9.6mmHgから術後0.7±1.1mmHgとほぼ消失した.動脈血酸素飽和度の上昇やUCG所見から,また根治術を施行した2例で直視下に,十分なASDが作成されていることが確認された.また現在までにASDの再狭窄をきたした症例は経験していない.
今後,外科的ASD作成術として,本法はBlalock-Hanlon手術より安全で確実性の高い術式となるものと考える.

キーワード
心房中隔欠損孔作成術, 修正 Harken ナイフ, Schuster 法, Blalock-Hanlon法, 外科手術手技

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