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日外会誌. 89(6): 931-937, 1988


原著

乳房の Dual-Energy Subtraction Radiography

神奈川県立がんセンター 外科

麻賀 太郎 , 増沢 千尋 , 河原 悟 , 本橋 久彦 , 岡本 堯 , 田村 暢男

(昭和62年6月12日受付)

I.内容要旨
通常の圧迫法によるマンモグラフィーでは乳房内の正常乳腺組織,他の軟部組織,腫瘤などが重なって描写されている.このためマンモグラフィーによる診断において,しばしば腫瘤と正常乳腺,他の軟部組織との分離が不明瞭で,腫瘤の存在や腫瘍の浸潤範囲を認識することが困難になることがある.そこで,腫瘤を認識する際に障害となる正常乳腺や,他の軟部組織を画像上取り除き,その存在や腫瘍浸潤の範囲を明瞭にし,診断率を向上させるためにFuji computed radiography(FCR)システムを用いて乳房のDual-energy subtraction radiography(サブトラクション)を行つた.方法はエネルギーの異なるX線(28KVおよび40KV)により,2枚の乳房X線像をイメージングプレートに撮影し,2枚のイメージングプレートに記録された画像をFCRシステムにより読みとり,画像データが一致するように位置あわせを行い,2枚の画像データ間に重み係数をかけてサブトラクション像を得た.対象症例は,触診あるいは超音波所見では乳癌と考えられたが通常のマンモグラフィーでは癌としての所見が不明瞭な症例,また良性疾患と考えられた症例のうち腫瘤影あるいは高濃度領域のある症例,さらに良性,悪性いずれとも判定しがたいspicula様所見が認められた症例とした.その結果,1)癌症例41例のうち,単純マンモグラフィー以上の所見が得られた症例は21例であり,その内訳は腫瘤影あるいは癌浸潤範囲が明瞭となつたもの18例,娘結節が描出されたもの3例であつた.2)良性疾患の場合マンモグラム上の腫瘤影,高濃度領域,あるいは線維化などによるspicula様所見はサブトラクションを行うと消失することが多く,これを利用して異常陰影の良性,悪性の鑑別に役立てることができた.以上からマンモグラフィーのサブトラクションは乳腺疾患の診断上有用と認めた.

キーワード
マンモグラフィー, digital radiography, dual-energy subtraction

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