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日外会誌. 89(6): 843-851, 1988
原著
胃癌における血中 CEA 上昇機序に関する臨床病理学的並びに免疫組織化学的研究
―末梢血と還流血中 CEA 値からの検討―
I.内容要旨末梢血と還流血中CEAを測定した胃癌53例と良性疾患8例を対象に,末梢血並びに還流血中CEA値と癌腫の臨床病理学的・免疫組織化学的所見との関連性を検討して,胃癌における血中CEA上昇機序の解明を試み,次の通りの結果と結論を得た.
(1)良性疾患とCEA非産生癌5例では,末梢血と還流血中CEA値に差はみられず低値を示し,5ng/ml以上の陽性例はなかつた.(2)CEA産生癌48例中のCEA実測値(mean±SE,ng/ml)と5ng/ml以上の陽性率は末梢血30.3±17.0・22.9%,還流血136.5±53.2・58.3%で,還流血中CEA値は末梢血よりも高値を示した.(3)末梢血並びに還流血中CEA値と最も有意な関連がみられたCEA産生癌の臨床病理学的・免疫組織化学的所見は静脈侵襲程度と侵襲位置で,CEA陽性率は末梢血ではV
0 6.3%・V
1 7.1%・V
2-3 50.0%・sm V 15.0%・ss V 58.3%,還流血ではV
0 18.8%, V
1 57.1%・V
2-3 94.4%・sm V 70.0%・ss V 91.7%であり, CEA実測値も静脈侵襲程度が高度であるほど,静脈侵襲位置が深いほど高値を示した.(4)血中CEA値と有意な関連がみられた腫瘍径・肉眼型・腹膜転移・壁深達度・リンパ節転移・リンパ管侵襲およびステージ分類と静脈侵襲との間には有意な関連がみられたが,CEAの血中上昇と関連がみられなかつた腫瘍の占居部位と静脈侵襲との間には関連性は認められなかつた.
以上の成績から,CEAの血中上昇は癌細胞がCEAを産生していることが前提条件であり,胃癌においては主として静脈内に浸潤したCEA産生癌細胞からCEAは還流静脈を介して経門脈性に末梢血中へ移行していると考えられる.腫瘍径・壁深達度・リンパ管侵襲やステージ分類などの血中CEA上昇関連因子は静脈侵襲と密接に関連することによつて二次的にCEAの血中上昇に関与しているものと思われる.
キーワード
胃癌, Carcinoembryonic antigen (CEA), 還流静脈血, 静脈侵襲, 免疫組織化学
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