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日外会誌. 89(5): 771-775, 1988


原著

慢性閉塞性動脈疾患に伴う重症虚血肢における骨格筋の組織酸素分圧と生化学的分析

川崎医科大学 胸部心臓血管外科教室
*) 川崎医科大学 第2生化学教室

山本 尚 , 藤原 巍 , 土光 荘六 , 稲田 洋 , 正木 久男 , 勝村 達喜 , 市原 宏介*)

(昭和62年7月6日受付)

I.内容要旨
壊死をともなう下肢の慢性動脈閉塞症を対象として,虚血肢骨格筋の酸素吸入最高組織酸素分圧(以下PtO2maxと略す)の測定と切断時に採取した同部筋組織の生化学的分析を行った.骨格筋のPtO2maxの低下とともに組織は嫌気的代謝が進み酸性化,乳酸の増加をみた.特にPtO2maxが10mmHg未満の骨格筋では,酵素の逸脱とエネルギーの消失が著しく,電気泳動による分析ではミオシンの崩壊がみられ,これらの変化は不可逆的であることが裏付けられた. PtO2maxが40mmHg以上の骨格筋は肉眼的にもほぼ正常で,外科的侵襲に耐えられ,同部で切断を行えば創の一期的治癒が可能と考えられた.
PtO2の測定は僅かの侵襲をともなうものの,その組織内の虚血による変化が推測でき,切断部位の決定や虚血肢の予後の判定に有用な情報を提供する.

キーワード
組織酸素分圧, 慢性動脈閉塞症, 重症虚血肢, 下肢切断, 嫌気的代謝

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