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日外会誌. 89(1): 45-54, 1988


原著

尾状葉胆管枝の X 線解剖学的研究

名古屋大学 医学部外科学第1講座(指導:塩野谷恵彦教授)

早川 直和 , 二村 雄次

(昭和62年2月10日受付)

I.内容要旨
尾状葉胆管枝と肝門部胆管との位置関係をX線解剖学的に解明する目的で,経皮経肝胆道鏡検査(以下PTCSと略)を行う過程で得られた胆道X線造影像を検討した.
1979年1月より1984年12月までに当科で行ったPTCSは112例である.このうちで肝門部に病変のない60例を検討した.52例が閉塞性黄疸を呈していた.当科でのPTCSは前腹壁からの経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)を行った後に, 1週間に1~2回の割合でPTCDカテーテルの交換を行い,カテーテルの太さが15Fr.以上となったらその瘻孔を通し施行する.この全過程において1症例につき少なくとも50枚以上の胆道X線像が得られる.これを用いて尾状葉胆管枝を検討した.
尾状葉胆管枝は, 1)右尾状葉を頭側より下大静脈に沿つて肝門部に向う枝(B1r 60例中53例に確認), 2)左尾状葉を頭側から肝門部へ向う枝(B1/s 60例中50例に確認), 3)左尾状葉を左外側より肝門部へ向う枝(B1/i 60例中59例に確認), 4) 尾状突起から肝門部に向う枝(B1c 60例中42例に確認)の4種類に大別できた. 4枝すべて確認できたのは32例, 3枝確認できたのは22例, 2枝確認4例,1枝確認2例であった.B1rは5.3枝中52枝が右葉の肝内胆管へ合流していた.B1/sは51枝中25枝が左葉の胆管へ, B1/iは59例中37枝が右葉の肝内胆管へ, B1cは42枝中39枝が右葉の肝内胆管へ合流していた.60例全例にいずれかの尾状葉胆管枝が確認できた.臨床の場で尾状葉胆管枝の検討を行うには,臨床の場で用いられている胆道造影像における尾状葉胆管枝のX線解剖学的な検討が重要であると考えられるがこれまでのところこのような研究はほとんどみられない.PTCDカテーテルからの胆道造影やPTCSによる選択的胆管造影を行えば尾状葉胆管枝は正確に同定できるものと考えられた.

キーワード
尾状葉, 尾状葉胆管, 胆道造影, 胆管 X 線解剖学, 経皮経肝胆道鏡検査 (PTCS)

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