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日外会誌. 88(12): 1684-1694, 1987


原著

胃切除後骨障害に関する検討
―とくに骨塩量からみた長期生存例の実態―

鳥取大学 医学部第1外科

西村 興亜 , 坂本 秀夫 , 古本 豊和 , 野坂 仁愛 , 河野 菊弘 , 日前 敏子 , 古賀 成昌

(昭和62年2月6日受付)

I.内容要旨
胃切除後3~30年に及ぶ長期生存例を対象に骨のin vivoの定量的計測法であるbone mineral analyzer法により骨塩量を測定し,骨障害の実態について検討した.
対象131例中68例(51.9%)に骨塩量の低下が認められ,胃切除例88例中40例(45.5%),胃全摘例43例中28例(65.1%)の頻度であつた.性別の頻度に差はなかつたが,術式別には女性でB-II型再建例に骨塩量低下が高率であつた.骨塩量低下の程度は男性より女性に高度で,ことに胃全摘例で高かつた.術後経過期間と骨塩量低下の程度との間に相関関係が認められ,術後期間の長いほど骨塩量低下も高度であつた.骨障害に関わる症状発現例は131例中26例(19.8%)にみられた.一方,骨塩量低下を示した68例中,症状発現例は20例(29.4%)であつたが,48例(70.6%)で無症状であつた.
以上より,胃切除後長期生存例では,きわめて高頻度に骨障害が発現していることが明らかとなつた.その多くは無症状でsubclinicalな病態といえるが無視し得ない障害であり,今後,その予防ならびに治療対策に関する研究が必要である.

キーワード
胃切除後骨障害, 骨塩量, bone mineral analyzer

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