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日外会誌. 88(11): 1624-1631, 1987


原著

新しい腫瘍特異的免疫能モニター
一IL2添加MLTR法一による乳癌特異的免疫能の検討

*) 京都大学 医学部第1外科
**) 京都大学 医学部第2外科

菅 典道*) , 沖野 孝*) , 児玉 宏*) , 大垣 和久*) , 戸部 隆吉*) , 稲本 俊**)

(昭和62年1月20日受付)

I.内容要旨
自己腫瘍抗原に対する患者リンパ球の幼若化反応(MLTR)測定系に,低濃度(90U/ml)のinterleukin-2(IL-2)を添加し,かつ抗原として可溶性超音波破砕腫瘍抽出液を用いることにより簡便なかつ安定性のある新しい腫瘍特異的免疫能測定法となしうるか否かを検討した.乳癌症例81例及び良性乳腺疾患17例を対象として上記のIL2添加MLTRを測定し,非添加MLTRと比較すると,前者にてstimulation index(S.I.)1.5以上で高率に有意の反応性を示し得た(S.I. 1.5以上の80%が有意)が,後者ではたとえS.I. 2.0以上でも有意性は低かつた(S.I. 2.0以上で有意は45%のみ).IL-2添加MLTRの反応値(S.I.)は良性く進行例く早期例の順に有意に上昇し,良性,n0,n1,n2症例の各々反応陽性頻度(総症例一S.I. 1.5以上一S.1. 2.0以上)は,良性(17-0-0),n0(40-17-9),n1(18-7-3),n2(23-5-3),であつた.また根治手術前後の変動をみると進行例(n2)において術後1~2週までに,早期例レベルにまで反応が回復する現象がみられた.これらの変動は非特異的な免疫能測定法であるリンパ球のIL-2反応性で観察されるそれとは全く異なつており,腫瘍特異的モニターの必要性,およびそのための本法(IL-2添加MLTR)の有用性が示された.

キーワード
Interleukin 2, MLTR, 腫瘍特異的免疫能, 乳癌

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