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日外会誌. 88(11): 1591-1603, 1987


原著

胃癌症例における脾臓の免疫組織学的解析

岡山大学 医学部第1外科

平松 聡

(昭和61年5月9日受付)

I.内容要旨
進行胃癌例における脾臓の胃癌stageによる変化を,単核細胞に対する各種モノクローナル抗体を使用し免疫組織学的に検索した.検索に使用した症例は, stage I 4例,stage II 3例,stage III 9例,stage IV 15例であり,対照として,脳血管障害により死亡した患者5例を用いた.また,胃癌例の6例には,内視鏡的にPSK局注療法が施行された.1) OKT3+,OKT4+,OKT8+細胞は胃癌stageの進行とともに,濾胞辺縁帯において滅少していた.2) OKM1+,OKT10+細胞は,胃癌stageの進行とともに,それぞれ濾胞辺縁帯,赤脾髄において増加を示した.3) OKIaI+,OKB7+細胞は,胃癌stageの進行とともに,濾胞において減少していた.4) Leu7+,Leu11b+,OKT9+,IL2 receptor+細胞は,胃癌の各stage別にみた検索では著変を認めなかつた.5) OKT6+細胞は,脾臓ではほとんど認められなかった.6) PSK局注例では, OKT4+,OKT8+,OKB7+細胞のstage進行による減少は認められず,対照群に比較して,相対的に増加する傾向にあった.またIL2 receptor+細胞とOKM1+細胞は明らかな増加を示した.
これらの事実より,胃癌例における脾臓はOKT3+,OKT4+,OKT8+のT cell系ではstageが進むにつれ,減少していたが,これはT cell系を介する免疫能が落ちているものと考えられた.また,OKB7+のB cell系についても,同様に減少している事実は,抗体産生能の低下状態となるものと考えられた.さらに, stageの進行とともに増加したOKM1+,OKT10+細胞の増加は,細網内皮系の賦活化状態と考えられた.さらにPSK 局注例においてOKM1+ IL2 receptor+細胞が増加している事実は,T cell系及び細網内皮系の賦活化により,脾臓を介して,抗腫瘍能を発揮する可能性が示唆された.

キーワード
胃癌例の脾臓, 免疫組織化学, モノクローナル抗体, 酵素抗体法

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