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日外会誌. 88(7): 826-831, 1987


原著

進行期腫瘍移植マウス脾細胞の皮下投与による皮下腫瘍
および人工的肺転移の促進

京都府立医科大学 第2外科学教室
*) 大阪鉄道病院 外科
**) 国立奈良病院 外科

土屋 邦之 , 山岸 久一 , 浜田 春樹 , 小道 広隆 , 岡 隆宏 , 田中 承男*) , 稲葉 征四郎**)

(昭和61年9月6日受付)

I.内容要旨
進行期の担癌宿主の腫瘍免疫に対する脾臓の影響をみるために, メチルコラントレン肉腫 (MCA-FおよびMCA-D) 移植後4~5週後のマウス脾細胞 (腫瘍径約2cm) (F4w spc, D4w spc) を皮下投与し, 皮下腫瘍および腫瘍細胞静注による肺転移 (人工的肺転移) に対する影響を検討した. MCA-F 1.0×104個を右側腹部皮下に移植し, 約1時間後にF4w spcを102, 104, 106, 108個と量を変えて左側腹部皮下に投与すると, 脾細胞投与量が増加するにつれて移植腫瘍の増殖が促進された. 健常マウス脾細胞 (N spc) と抗原性の異なるMCA-Dの大きな腫瘍を持つたマウスの脾細胞であるD4w spcを同様に107個投与しても腫瘍増殖に対して有意な影響を与えなかつた. MCA-Fの高肺転移亜系であるFLn2を2. 0×104個尾静脈より静注し, 同日にF4w spcを側腹部皮下に107個投与したところ, 対照群に比べ有意に肺転移が促進された. MCA-Fで免疫されたマウスの脾細胞を同様に投与したところ有意に肺転移が抑制された. また, MCA-F切除後の高免疫マウスに対する人工的肺転移はF4w spc皮下投与により促進された. したがつて, 腫瘍進行期のマウス脾細胞には腫瘍特異的な免疫抑制細胞が存在すると思われた. また, effector cellを腫瘍と混合しないで皮下投与する今回の実験法はeffector cellの宿主に対する影響を検討するうえで有用な実験法と思われた.

キーワード
脾細胞, 免疫抑制, 肺転移, メチルコラントレン肉腫

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