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日外会誌. 88(5): 622-628, 1987


原著

肝部下大静脈閉塞症
―自験11例の外科治療と予後に関する検討―

兵庫医科大学 胸部外科
**) 兵庫医科大学 第1外科
*) 関西労災病院 心臓血管外科
***) 現 心臓血管研究所付属病院 外科

青木 啓一***) , 宮本 巍 , 清水 幸宏*) , 村田 紘崇 , 川原 勝彦 , 岡 良積 , 岡本 英三**)

(昭和61年6月19日受付)

I.内容要旨
過去9年間に経験した肝部下大静脈閉塞症11例の臨床所見,病型,治療および予後を検討し,以下の結論をえた. 
(1)11例中,膜様閉塞7例(うち不完全閉塞3例),非膜様閉塞4例で,臨床症状は両者間に明らかな差は認めなかつた. 
(2)膜様閉塞7例に対し,計8回,ブロッケンブロー法を応用した閉塞部裂開術を施行し,裂開前後で下大静脈・右心房間圧較差は,8~24mmHg(平均13.1±5.1mmHg)より,3~9mmHg(平均7.0±1.9mmHg)に下降した(p<0.01).術後合併症もなく,症状の改善がみられ,膜様閉塞症例には,まず試みるべき方法と考える. 
(3)非膜様閉塞4例には,下大静脈・右心房バイパス術を3例に,二方向性閉塞部裂開術を1例に施行した.また,膜様閉塞の2例にTubbs’拡張器を用いた経心的狭窄部裂開術を追加した.異なる3術式ではあるが,下大静脈・右心房間圧較差は7~17mmHg(平均11.7±3.4mmHg)より,1~3mmHg(平均1.7±0.7mmHg)と著明に改善した(p<0.01). 
(4)術後経過観察期間は8ヵ月より9年(平均4年1ヵ月)で,手術死亡,遠隔死亡はなく,臨床症状の改善がみられている. 
本症は,慢性の経過をとることが多く,臨床症状,病型に応じた,安全で,より手術侵襲の少ない術式の選択が必要である.

キーワード
肝部下大静脈閉塞症, Budd-Chiari 症候群, 閉塞部穿刺裂開術, 下大静脈・右心房バイパス術, 副肝静脈造影

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