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日外会誌. 88(5): 622-628, 1987
原著
肝部下大静脈閉塞症
―自験11例の外科治療と予後に関する検討―
I.内容要旨過去9年間に経験した肝部下大静脈閉塞症11例の臨床所見,病型,治療および予後を検討し,以下の結論をえた.
(1)11例中,膜様閉塞7例(うち不完全閉塞3例),非膜様閉塞4例で,臨床症状は両者間に明らかな差は認めなかつた.
(2)膜様閉塞7例に対し,計8回,ブロッケンブロー法を応用した閉塞部裂開術を施行し,裂開前後で下大静脈・右心房間圧較差は,8~24mmHg(平均13.1±5.1mmHg)より,3~9mmHg(平均7.0±1.9mmHg)に下降した(p<0.01).術後合併症もなく,症状の改善がみられ,膜様閉塞症例には,まず試みるべき方法と考える.
(3)非膜様閉塞4例には,下大静脈・右心房バイパス術を3例に,二方向性閉塞部裂開術を1例に施行した.また,膜様閉塞の2例にTubbs’拡張器を用いた経心的狭窄部裂開術を追加した.異なる3術式ではあるが,下大静脈・右心房間圧較差は7~17mmHg(平均11.7±3.4mmHg)より,1~3mmHg(平均1.7±0.7mmHg)と著明に改善した(p<0.01).
(4)術後経過観察期間は8ヵ月より9年(平均4年1ヵ月)で,手術死亡,遠隔死亡はなく,臨床症状の改善がみられている.
本症は,慢性の経過をとることが多く,臨床症状,病型に応じた,安全で,より手術侵襲の少ない術式の選択が必要である.
キーワード
肝部下大静脈閉塞症, Budd-Chiari 症候群, 閉塞部穿刺裂開術, 下大静脈・右心房バイパス術, 副肝静脈造影
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