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日外会誌. 88(5): 577-583, 1987
原著
障害肝切除後のストレス潰瘍予防処置としての迷切術の肝再生に及ぼす影響
I.内容要旨肝硬変肝切除後に頻発するストレス潰瘍の予防対策としての迷切が肝再生に如何なる影響を与えるかについて実験的に検討した.
対象と方法:肝硬変ラットは体重200g前後のWistar系雄性ラットに4%thioacetamide(TAA)を10週連続腹腔内へ投与する方法で作製し,肝切除はTAA投与終了1週目にAnderson法による約68%の肝切を行い,同時に迷切と幽門形成術を付加した.ストレス潰瘍予防に対する効果の指標は胃内pH,胃壁血流を,また肝再生に及ぼす影響については肝再生率,mitotic index,
3H-thymidineの取り込み率,thymidine kinase活性を測定して以下の成績を得た.
1.TAA投与による肝障害は組織学的にヒト乙型肝硬変に類似した所見を呈し,胃粘膜下組織にはうつ血と静脈の拡張を認めた.
2.肝硬変肝切3日後に胃内pHと胃壁血流の有意の低下をみた.迷切群では胃内pHと胃壁血流の有意の低下をみた.迷切群では胃内pHの低下の抑制を得たが,胃壁血流は対照の肝切群よりも低値を示した.
3.肝硬変肝切3日目にプロスタグランディン,シメチジンを投与すると胃壁血流は有意に増加した.
4.肝切除後の
3H-thymidineの取り込み率,thymidine kinase活性は,迷切群では単肝切群よりも明らかな抑制をみた.
5.迷切群のmitotic indexは単肝切群よりもpeak値は低下し,また肝再生率も明らかに抑制された.
以上より,肝硬変肝切除後のストレス潰瘍予防としての迷切術は胃壁血流の低下が著しい上に,肝再生を阻害することから不適当と思われた.
キーワード
肝硬変肝切除, ストレス潰瘍, 胃壁血流, 肝再生, 迷切術
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