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日外会誌. 88(4): 478-482, 1987


原著

人工気管による気道再建術

京都桂病院・呼吸器センター 

松原 義人 , 畠中 陸郎 , 小鯖 覚 , 塙 健 , 二宮 和子 , 船津 武志 , 池田 貞雄

(昭和61年5月7日受付)

I.内容要旨
我々は昭和54年以来,人工気管による気道再建術を12例に行つた.そのうち,気管切除後が4例,気管分岐部切除後が8例であつた.使用した人工気管はいずれもnonporous tube typeで,Neville型7例,桂型5例であつた.
人工気管による気管再建例は腺様嚢胞癌2例,扁平上皮癌1例,甲状腺癌1例で,切除範囲は肺癌再発例の8リングを除いて10リング以上であつた.使用した人工気管はstraight typeで,Neville型3例,桂型1例であつた.予後は,気管・腕頭動脈瘻のため1ヵ月後の出血死1例,3ヵ月および43ヵ月後の癌死2例,15ヵ月後他病死1例であつた.
人工気管による気管分岐部切除後の気道再建例は,扁平上皮癌5例,大細胞癌2例,結核性肉芽腫1例で,気管切除範囲は9リング1例,8リング3例,7リング2例,5・4リング各1例であつた.術式は右肺管状別剔4例,右肺上葉切除2例,気管分岐部切除のみ2例であつた.使用した人工気管はstraight typeのNeville型2例および桂型1例,curved typeの桂型1例,bifurcated typeのNeville型2例および桂型2例であつた.予後は,術中換気不全による2日後の心不全死1例,縫合不全・膿胸による40日後の呼吸不全死1例,気管支・肺動脈瘻による3ヵ月後の出血死1例,4ヵ月後の癌死および急性心不全死各1例,吻合部の離開・肉芽形成または人工気管の逸脱による15ヵ月後の呼吸不全死2例,25ヵ月後の事故死1例であつた.
人工気管による合併症は,吻合部の離開5例,肉芽形成4例,膿胸3例,出血2例,人工気管の逸脱1例などであつた.これらの合併症の予防のために人工気管の吻合方法,吻合部の補強,周囲臓器の保護など種々の工夫を行つた.しかし,人工気管の材質,形状,縫合輪などの改良がさらに必要と思われる.

キーワード
人工気管, 気管形成術, 気管再建, 気管分岐部再建, 右肺管状剔除

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