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日外会誌. 88(4): 422-431, 1987
原著
食道癌におけるケラチンの局在に関する免疫組織学的研究
I.内容要旨食道癌のケラチン分子量の表現型について既に免疫生化学的な分析結果が報告されており,扁平上皮癌における高分子量ケラチンの減少が指摘されているが,多数の食道癌症例についての詳細な免疫組織学的検討はなされていない.そこで5種類の市販抗ケラチン抗体を用いて55例の食道癌切除標本についてケラチンの局在を検討した.
方法はホルマリン固定,パラフィン包埋後,4μの切片を作成し,プロテアーゼ処理後,PAP法
1)にて染色した.一次抗体として表皮由来ケラチンに対するDAKO,KL1,EY904,肝癌細胞由来ケラチンに対するEY902,豚腎上皮培養細胞由来ケラチンに対するPKK1の5種類の抗体を用いた.
癌病巣よりかけ離れた食道上皮はいずれの抗体でも基底上層が染まり,角化層形成に関与する高分子量ケラチンを産生しない表皮の性格を示した.食道腺管は何れの抗体でも強く染まつた.癌に近接する食道上皮は基底層が強く染まるなど癌細胞同様,角化パターンの異常が推定された.食道癌では,未分化癌は各抗体で陰性,偽肉種・転移乳癌・噴門癌はEY904でのみ陰性,腺扁平上皮癌の角化部位は各抗体で陽性,腺腔形成部位ではKL1抗体のみ強陽性であつた.次に食道癌染色結果を各癌胞巣内での染色局在性の主たるパターン(染色パターン)及び染色陽性細胞数の割合(染色率)で,各々7種・5種に分類した.原発巣は同一切片上でも種々のケラチン染色パターンを示し,原発巣と転移巣の染色率・染色パターンは必ずしも一致しなかつた.EY904抗高分子量ケラチン抗体による染色率はリンパ節転移の程度・組織学的進行度・根治度・予後と関連し,高分子量ケラチンが強く染まる癌ほどリンパ節転移の程度が低いと推定された.しかし,EY904で認識された高分子量ケラチンと深達度とは相関がみられず,分化度はDAKOポリクロナル抗体染色率とのみ相関した.
キーワード
食道癌, 免疫組織学, 抗ケラチン抗体, 高分子量ケラチン, リンパ節転移
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