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日外会誌. 88(4): 378-389, 1987


原著

正常および異常環境下における消化管器械吻合創の治癒機転に関する実験的研究

杏林大学 医学部第1外科学教室(主任:立川 勲教授)

三宅 純一

(昭和61年1月29日受付)

I.内容要旨
高齢化社会におけるhigh-risk症例の増加に伴い,手術侵襲の軽減および手術の簡略化,同時に再建術において信頼性の高い消化管吻合が要求され,安全性,確実性,迅速性において多くの利点を持つとされる消化管器械吻合が注目されるようになつた.そこで,従来から行われている用手吻合,特に治癒機転の優れているGambee吻合と比較することにより,その有用性について検討した.
実験には雑種成犬92頭を用い,吻合は,①用手吻合(Gambee吻合)および,②器械吻合〔二列交互配列ステイプル((EEA型))および一列配列ステイプル((中山式弯曲軸型))〕を行つた.さらに,吻合時の条件として,①正常環境と②異常環境(消化管結紮によるイレウス状態)を設定し,それぞれ吻合部の治癒過程を各種の創傷治癒の指標を用いて経時的に観察し,検討した.
正常環境における吻合では創傷治癒の最も有効な指標である血管交通性(以後vascular communication)は用手吻合に早く,5日目より認められたが,二種の器械吻合では7日を要した.しかし,器械吻合では内翻吻合のために漿膜癒合が良好で,特に二列交互配列ステイプル器械吻合での他臓器癒着は皆無であり,さらにスチール製ステイプルのために縫合材料としての組織反応が少ないという利点が認められた.
また,異常環境下の吻合においては炎症および浮腫が長時間存在するために組織癒合が遅延し,器械吻合は組織挫滅など炎症をさらに助長させたが,用手吻合と有意差は認められなかつた.
本研究により,適応を充分に考慮し,その創傷治癒機転を熟知した上での消化管器械吻合法は極めて有用性の高いことが確かめられた.

キーワード
消化管器械吻合, EEA 型器械吻合器, 中山式弯曲軸型器械吻合器, 消化管吻合創治癒機転, Gambee 吻合

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