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日外会誌. 88(3): 327-339, 1981


原著

腹膜炎におけるエンドトキシン血症発症に関する研究
―とくにエンドトキシン吸収についての検討―

広島大学 医学部外科学第1教室(指導:横山 隆助教授)

竹末 芳生

(昭和61年5月23日受付)

I.内容要旨
外科的感染症においてEndotoxin(Et)血症を高率に併発するものとして,胆道感染症とともに腹膜炎が挙げられる.そこに注目し,我々は腹膜炎時におけるEt吸収についての実験的検討を行なつたので報告する. 
雑種成犬各6頭を用い,対照群,リンパ非ドレナージ群,胸管(TD)ドレナージ群,TD及び右リンパ本幹(RLD)両ドレナージ群に分け,腹腔内横隔膜下面中央にEt(E. coli 055 B5 LPS Difco)0.5mg/kgを投与した.両ドレナージ群において,RLDリンパのEtは投与後1時間目でpeak値4.53×107±2.38×107pg/ml,TDリンパは7,203.1±5,022.9pg/mlをとり,全経過を通じ有意の差を認めた.門脈血中Etは1時間目に18.4±13.6pg/mlと軽度上昇したにとどまり,3時間目には10pg/ml以下と正常に復していた.それに比し,非ドレナージ群,TDドレナージ群における3時間目の門脈血中Etはそれぞれ5,516.2±1,856.4pg/ml,1,284.2±515.2pg/mlと上昇を認めた.以上より,腹膜からのEt吸収経路はリンパ行性であり,とくにRLDが重要な役割を果たしていると考えられた. 
次に,腹腔内に投与したEtが時間経過とともにどのような量的変化を受けるかを検討したところ,腹腔内に投与した1.4%が3時間目までに血中に移行し,その6.2%が血中での処理を免れ残存していた.つまり,3時間目には投与量の約0.1%しか血中に存在していなかつた事になり,腹腔内Etに対する生体の防御機構の重要性が認められた.

キーワード
腹膜炎, エンドトキシン血症, リンパ行性吸収経路, 右リンパ本幹, 発色合成基質法

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