[書誌情報] [全文PDF] (2880KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 88(2): 199-204, 1987


原著

一時的体外バイパス下大動脈瘤手術における術中自家血輸血の経験

久留米大学 医学部第2外科

赤川 治夫 , 諫本 義雄 , 中山 陽城 , 名嘉真 透 , 原口 周一 , 大庭 聡 , 古賀 道弘

(昭和61年5月6日受付)

I.内容要旨
一時的バイパス下大動脈瘤手術では,術中出血が大量となることがあり,術中自家血輸血は血液節減上,有意義である.比較的大量出血の可能性がある大血管手術は全身ヘパリン化を行う機会が多く術中自家血輸血のよい適応と考えられる.今回,Sorenson Autologous Transfusion System(ATS)を用いた術中自家血輸血を9例の一時的体外バイパス下大動脈瘤手術に施行した.全例全身ヘパリン化後(1mg/kg),20~40mmHgの低圧吸引にて出血を回収,局所ヘパリン化も行いACT 300~400秒以上を確認した後,落差にて全血返血を行つた.返血量は425~3,700ml,平均1,804±998mlで再利用率(自家血返血量/総出血量)は43.1±15.8%であつた.術直後軽度溶血を認めたが,腎機能に問題はなく,また術後出血,DIC,感染,肺へのmicroembolismも特に問題とならなかつた.ACTによる確実なヘパリン化をする限り術中自家血輸血は安全な方法と思われた.本邦では,全血返血を行う術中自家血輸血法は普及していないが,輸血後肝炎の他に,最近のAIDSなどを考えると,見直すべき方法と考えられる.

キーワード
術中自家血輸血, Sorenson Autologous Transfusion System, 大動脈瘤手術, 血液節減

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。