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日外会誌. 88(1): 74-80, 1987
原著
肝切除前の肝動脈塞栓術(TAE)の安全性に関する基礎的検討
I.内容要旨肝切除前に肝動脈塞栓術(TAE)を施行する際の安全性につき,特に術前TAEと肝切除との間隔について基礎的検討を行なつた.ラットにおいて開腹下に肝動脈に直接カテーテルを挿入し, TAEを施行した. TAEにより血清トランスアミナーゼ値は著増するが, 3日目には前値に復し, Embolusの種類による差異は認められなかつた.アミノピリン呼気テスト(ABT)より見た肝のマイクロゾームの機能総量は, TAEにより前値の53%に低下(p<0.05)し,その後徐々に回復を認めるが,前値までの回復には14日を要した.組織学的検索では,塞栓された肝内動脈は肉芽に置換され,再疎通像は21日目でも認め得なかつた.しかし肝細胞の索状構造は常に良く保たれていた. TAEと68%肝部分切除の間隔が再生肝DNA合成能へ与える影響は,直後27~48%(p<0.001), 4日で39~58%(p<0.001), 7日で78~91%(p<0.05), 14日で90~94%と正常肝再生に比し抑制されたが, 14日の間隔では再生肝DNA合成能はTAEの有意の影響を認めなくなった.生存率においてもTAE直後に68%肝部分切除を施行した場合の33~50%に比し14日の間隔では, 88%と有意の上昇(p<0.05)を認めSham TAEに68%肝部分切除を施行した生存率(100%)に比し有意の差を認めなかつた.以上の結果より,肝切除前のTAEは肝切除後の肝再生を著明に抑制するが, TAE後の肝マイクロゾーム機能総量の回復した時点での肝切除では,その影響は認め得なかつた.
キーワード
TAE, 肝切除, 肝再生, アミノピリン呼気テスト
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