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日外会誌. 88(1): 58-62, 1987
原著
直腸癌に対する骨盤内臓全摘術
I.内容要旨54歳男性の,肛門管に及ぶ直腸腺癌で,前立腺,肛囲皮膚及び大殿筋に浸潤し,尾骨外側部に瘻孔を形成した症例に対し,骨盤内臓全摘術を行なつた.患者は,最初手術を望まなかつたので,放射線療法(X線による外照射5,000r)を行なつた後の手術となつた.肛囲皮膚を広範囲に切除し,大殿筋の一部及び,強固に直腸と癒着した仙骨下部(S4以下)の合併切除を必要とした.切除後の組織欠損が大きく,修復には形成外科の協力を得た.大殿筋皮弁が利用され,創は一次的に閉鎖された.これらの手術過程を映画で供覧した.
1962年から1985年までの間に,国立がんセンター病院で実施された下部大腸癌に対する骨盤内臓器全摘術54例の成績を示した.原発癌35例,再発癌19例,部位別頻度では,S状結腸14例,直腸40例(Rs 4例,Ra 9例,Rb 17例,P 3例,詳細不明の直腸7例)であつた.原発癌の28例及び再発癌の6例では,本術式で臨床的にcancer freeとなし得た.手術死亡(術後30日以内死亡)は3例(5.6%)であるが,合併症,原疾患再燃などで,退院出来ないまま死亡した4例を含めると,入院死は7例(13%)であつた.入院死は再発癌に多く(7例中6例),再発癌19例に占める割合は31%と高かつた.これに対し,原発癌35例では,1例(2.9%)で,容認出来る数値を示した.原発癌手術35例の5年生存率は,34.2%,再発癌手術19例では,今までのところ5年生存0である.原発癌治癒切除28例の5年生存率は44%で,長期生存例にはリンパ節転移がなかつた症例が有意に多かつた.
キーワード
直腸癌, 骨盤内臓全摘術, 局所再発癌, 拡大手術, 膀胱浸潤
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