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日外会誌. 88(1): 49-57, 1987
原著
肝硬変肝切除後の急性胃病変発現に関する実験的研究
―とくに胃壁防御機構の変動を中心として―
I.内容要旨肝硬変肝切除後の急性潰瘍発生機序について,経日的に胃壁血流量,門脈圧,胃粘膜NA量,胃粘膜PGE
2量,及び胃粘膜ATPを測定し,さらに水浸拘束ストレスを負荷して,これら指標の変動と急性潰瘍発生との関連について検討した.またPGE2経口投与による潰瘍発生予防効果についても併せ論じた.
実験は体重200g前後のWistar系雄性ラット386匹を用い,TAA投与にて肝硬変ラットを作製し約70%の肝切除を加え,対照には同週齢の正常ラットを用いた.
1.TAA投与による肝硬変ラットは組織学的にヒト乙型肝硬変に相当する所見を呈し,胃粘膜下組織には門脈圧上昇によるうつ血と静脈の拡張を認めた.
2.肝硬変群では肝切後に,胃壁血流,胃粘膜NA,胃粘膜ATPの有意の減少と胃粘膜PGE
2の減少傾向を認めた.
3.肝硬変肝切3日目に水浸拘束ストレスを負荷すると,対照群に比較し胃壁血流と胃粘膜PGE
2は早期より減少し,潰瘍指数も高値を示した.
4.PGE
2を投与すると,ストレス負荷後の胃壁血流量の減少は抑えられ,潰瘍指数も低値を示した.
以上より,肝硬変肝切後の胃粘膜は防御能の低下を生じ潰瘍発生準備状態にあると考えられた.また水浸拘束ストレスを負荷すると,胃壁血流量は早期より有意に減少し,PGE
2の合成障害を来たし胃病変は増悪すると考えられ,外因性PGE
2投与による胃壁血流は改善され潰瘍発生は抑制された.
キーワード
肝硬変肝切除, ストレス潰瘍, 胃壁血流, 胃粘膜 NA, 胃粘膜PGE2
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