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日外会誌. 88(1): 14-19, 1987
原著
破傷風における autonomic overactivity 実験モデルの作成
I.内容要旨呼吸管理の発達した現在,破傷風の死因はautonomic overactivityによる循環不全である.このautonomic overactivityの原因を明らかにする目的で,家兎を用い実験モデルの作成を試みた.破傷風は,tetanus toxinを耳介静脈より静注して作成した.そして,破傷風においてautonomic overactivityを出現させるのに必要な,①tetanus toxinの量,②tetanus toxinの投与方法,③tetanus toxinの種類について検討を行つた.
purified tetanus toxinの1回投与では,32.4μg(10~20MLD)の場合と972μgに増量した場合でほとんど差はなく,いずれもその変動幅は実際臨床で見られる血圧変動よりも小さかつた.その結果,autonomic overactivity出現にはtetanus toxinの絶対量は関係しないと結論した.
次に,purified tetanus toxin 30μgを投与し,12時間後にさらに30μgを追加投与した.しかし,2回目のtoxin投与に対する血圧変動はほとんど認めなかつた.これに対して,1週間前に0.5μgのtetanus toxinを前投与していた場合,tetanus toxin 30μgを投与すると,約8時間後に臨床上のautonomic overactivityに見られる血圧変動とほぼ同一の血圧変動が出現した.しかし,約48時間を経過してもhypotension phaseは出現せず循環不全も生じなかつた.
次に同じ2回投与法であるが,purified tetanus toxinに換えて,crude toxinを投与した.その結果,最初の血圧変動はpurified toxinの場合と同様であつたが,約35時間後にはhypotension phaseが出現した.さらに45~46時間後には循環不全と考えられる状態が出現し,臨床例と同様のautonomic overactivityモデルの作成に成功した.
このようにcrude toxinの投与によりはじめてhypotension phaseが出現し,循環不全出現にはpurified toxin以外に何らかの要素が必要であると考えられた.
キーワード
破傷風, autonomic overactivity, 実験モデル
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