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日外会誌. 87(4): 435-442, 1986
原著
総肝管より上流胆管に狭窄のある左右型肝内結石症の治療
I.内容要旨1976年1月より1984年12月までに名古屋大学医学部第1外科で扱つた肝内結石症は57例である.これらのなかでもつとも治療が困難とされている総肝管より上流に厚生省肝内胆管障害研究班による分類規約(案)(以下規約案)での胆管狭窄病変を有する左右型肝内結石症は15例であつた.これらもつとも治療困難とされている15例の治療法を中心に検討した.Primary caseは2例であつた.全例に胆道鏡検査,治療を行つた.経皮経肝胆道鏡検査(以下PTCS)8例,術後胆道鏡検査(以下POC)5 例,両者の併用2例であつた.X線上規約案での狭窄病変は23病変であつた.これを胆道鏡検査を併用して精密診断をすると絶対的な狭窄は3病変(このうち1病変はX線検査では全く指摘できなかつた.)であつた.他はX線造影上一見狭窄様に見えるものの,詳細に検討すると結石による陰影欠損4病変,胆管炎による胆管の変形4病変,胆管拡張のための相対的狭窄12病変,不明1病変であつた.15例は治療法により以下の3群に大別できた.I群 胆道鏡的截石術のみで治療した群6例,II群 胆道鏡的截石術後に手術を行つた群6例,III群 手術を行つたのち胆道鏡的截石術を行つた群3例である.
治療成績:I群 再発死亡1例,他病死1例,膿胸1例,良好3例,II群 全例良好,III群 3例すべて結石遺残,このうち2例はPTCSにより再治療後経過良好,1例は胆管気管瘻を形成し他院で再治療をうけた.第II群は今回検討した15例のように,一般的に治療困難とされている症例に対する理想的な治療法と考えられる.全身状態の不良な時期,胆管形態の診断が不確実な時期に手術を行つたり,術後胆道鏡的截石術の截石ルートを作るために手術を行うのではなく,まずPTCSを行つて截石をすすめ,全身状態の改善した時期あるいは胆管形態を充分に把握できた時期に手術療法や内視鏡的療法をいかに組合せて治療を行うかを決定すべきであると考えられた.
キーワード
肝内結石症, 胆道鏡的截石術, 経皮経肝胆道鏡検査(PTCS)
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